オッサンの毎日 2002/5〜12月分

                                  

 


                                 12/18日

                相棒(バディ)
          
 だいぶ以前の話、そう20代の前半、ぼくは着物の仕事をしてい
ました。和服・着物の絵付けです。仮住まいの狭い工房だったけど
、ぼくは毎日、友禅の色さしや、焦がした白蝋を使っての特殊なロ
ウケツ染を、おもに付け下げや羽織、塩瀬の帯などに施していたの
です。

 模様師などと、ちょいと洒落た名前を記した名刺を作り、得意に
なってばら撒いていた若者にも子供ができました。長女です。昭和
49年。オイルショックがすぐ目の前で待機していたころですね。

 天狗になった若者は、なんでも出来るとばかり、オイルショック
後の不景気を口実に仕事を変えました。以来30年、出る杭は、文
字通りその都度、いやというほど打たれ折られ削られました。しか
しねぇ、ちっとも懲りませんね。なぜならぼくはまた、いま新たな
道を切り開こうとしているからです。

 オッサンもいいかげん50も過ぎれば落ち着くなんて、だれが言
ったのでしょうね。ぼくは落ち着くどころかますます跳ねています。
来年もまた、あらたな勝負に打って出ます。だめならその翌年もや
ります。何をやるのかはヒ・ミ・ツ。長年打たれつづけると結構知
恵がついてきます。であるからしてとりあえず秘密なのです。

 さて話はガラット変わります。妻沼町というのが熊谷市のはずれ
、群馬県との境にあるのです。仕事で出かけました。国道140号
線を、関越花園インターから北上すると20分程度で着きます。熊
谷警察暑を大きく左にカーブするとあとは直線道路、日曜日の道路
はガラガラでした。

 国道沿いのコンビニで買い物をすまして車に戻ると、歩道を犬と
おじいさんが歩いて来ます。二人が近づいて来て始めてぼくは気が
つきました。犬もおじいさんも、それはもうずいぶんと汚れている
のです。そう、一目で浮浪者だとわかる風体でした。

 うーーん、困ったな。ぼくはね、しばらくシュンとしてしまいま
した。最近ね、結構涙もろいんですよ。あのね、なにがぼくの胸を
そんなにしめつけたかというとね、それは連れの犬のしぐさなんで
す。それはもう精一杯おじいさんを気遣っているのです。ぼくには
わかるんです。

 あのワンちゃんにとってはかけがえのない人なのでしょう。たと
え犬と人間でも彼らはお互いを相棒(バディ)と思っているに違い
ないのです。オンボロの乳母車に家財道具一式を乗せ、遠くの山々
を見ながらゆっくりと歩む老人と犬。ぼくのなかでは、それはもう
うらやましいほどカッコよく、そして悲しい姿でした。

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                                12/10
           あっという間の秋


 どんなにお願いしても、どんなに頼んでも、世の中そんなに自分
の思うようになんか進みやしない。そんなことはね、念押しのよう
に言われなくったってね、わかっている。

 えっ、誰に言われたんだって。いえいえ、ぼくが自分に向かって
言っているだけなんで、なにも神様や首領様や町会長様に言われた
わけじゃあないんです。いろいろあってね。つまり健全な社会生活
を営んでいるオッサンにも、悩みや、悲しみや、苦しみが、これま
たやっぱりあるのであります。

 我が家にはケンタクンという、それはそれはカシコク、そのうえ
器量よしの飼い犬がいます。彼は今年で5歳、早いですねぇ。手の
ひらの上でクンクンと声をだしていたのが昨日のようです。

 そんな彼も年頃になりました。恋の季節です。散歩コースには、
お気に入りのワンちゃんが数匹いるんです。ケンタクンは、ホッツ
ホッツホッツといった、奇妙な声を出して近づきます。たいていの
犬は、いやな顔をしてケンタクンを睨み吼えます。彼はスゴスゴと
その場を離れ、悲しそうな目をしてぼくを見つめます。

 「よしよし、あのね、あんなの相手にしちゃあいけないんだな、
キミにはもっと素敵なふさわしい犬がいるんだからね。神様はきっ
と探してくれるから」なんて慰めの言葉をかけてやるんだけど、ど
うにも、あの悲しそうな目で見つめられると困る。

 しかし思う。このままズーーーット毎日同じような日々が続いた
ら、ズーーーット同じ散歩コースだったら・・・・たぶん彼の寂し
い目は、ぼくを、やはりズーーーット悩ませるのだろう。

 だからってことじゃあないんだけど、ぼくは我が家の飼い犬に寛
大で、自由に外を歩かせること以外、なんでも思うようにさせてい
る。家に上がろうが、家人を唸ろうが、新聞配達人を恫喝しようが
、飯が遅いと暴れ騒ごうがである。

 ハイハイとばかり、いそいそと犬の世話をするぼくを、家人は微
妙な目つきでみている。でもね、彼の命は確実にぼくより短いんで
ね。つまりぼくや、たぶん我が家の家族全員の精神を、測りようが
無いほどうんとやさしくしてくれている彼を、精一杯、やさしく、
とことん面倒をみてやることは、とても大事なことだと思っている。

 今年はいきなり冬でしたね。秋がなかったように思う、いいオッ
サンがみっともないけど、あまりかっこよくないけど、やはり秋は
寂しい季節です。あっという間に通りすぎる秋も・・・やはり寂し
いですね。
                            
                         深津 勝

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                                   10/10                 

         新宿その3・・・でもない


 気がつくとあっという間に1ヶ月以上トキが経過していました。

ウーーーントたぶん、賢明な読者の何人かはですね、ぼくがメルマ
ガを休んでいるいい訳として、「ヤツはキット、しばらく気を失っ
ていました」なんてなことを書くに違いないと思っていたことでし
ょう。はい、そのまんまです。ネラッテました。

 あのいい訳をもっとするとですね。ぼくはプチ鬱になることがあ
るんです。もちろんプチ鬱ですからね、そこはその、あの、本格的
な鬱とはぜんぜん違うんです。うーーん、ぜんぜんなんて、そんな
ふうにに強調すると、かえっておかしいかな。とにかくプチなので
あるからしてそれほど深刻ではないのですね。

 でもってあっという間にトキが経過して10月になりました。新
宿でぼくに降りかかった災難は(自分が悪いのですがね)一時も早
く忘れたく、その辺が記憶を遠ざけているのか、そんなんでいまで
はあまり詳しく思い出すことができせん。

 街のオッサンがプチ鬱になろうが、飼い犬が奇妙な声で吼えるよ
うになろうが、娘がへそにピアスをつけようが、カラスに突つかれ
そうになろうが、夜中に7回便所に行こうが、カミさんの友達がこ
のメルマガを読んでいようが世の中は進んでいきます。

 であるからして、ぼくももっと頑張らなければならないのです。
プチ鬱などぶっ飛ばしました。鏡見ると、そこには精悍な顔つきの
・・・片方の眉毛が45度持ち上がり、唇が引きつり、鼻の穴も当
然通常の1.5倍ひろがり、加えてほほまでも引きつったぼくがい
ます。カッコいいです。呼吸も心拍も通常値の2倍(通常がどのく
らいかわからない)です。でもってあたりを見まわし睨みつけます。
ガルルルル・・

 イカンイカン。あまり心拍数があがったので鏡から目を離しまし
た。しばらく荒い呼吸が続きます。フウフウフウ・・・ン?ひょっ
としてぼくは・・・・・・プチ躁になっているみたいです・・・・
・・・・・・・

 普通でいいんだけどなぁ

 

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                                   8/28


                 新宿その2


 世のおじさん達はどうなんだろうか。とにかくぼくはね、普段か
らミツメられるのに弱いのです。つまり10代オッカケ少女達にミ
ツメられ、ぼくのかわゆいバンビのような心臓は、そう、生命維持
に必要な鼓動を、遥かに超える激しい心拍活動を始めてしまったの
です。

 じっさいのところ、いつもの327倍ぐらい激しく(少しオーバ
ーです)活動を始め、さらに追い討ちをかけるがごとく、中学以来
の赤面対人恐怖がまだ完全に完治していないぼくの、そうですバン
ビのようなハートを、これまたコレデモカ・コレデモカもかと痛め
つけるのでありました。あぁ神よ。

 突然携帯電話が鳴りました。まずい!こんな場所で!どーしよう。
えーと説明をするとですね。じつは着信メロディのことなんです。
あの、じつはぼくの着メロは、なにを隠そう・・・うーーん、これ
もべつに隠さなくてもいいんだな。それでその曲なんだけどね、な
んと松山千春の・・あれ、なんていう曲だっけ。曲名がわかんない。
なんだっけ、あーーめんどくせぇ、えーとこういう曲

「めーーーーぐるーーー、めぐるーー季節のなかでーーー、あーー
ーーーーなぁーたぁーわーーー・・・・」わかりますか。そんな曲
が、土曜の、新宿の、ルミネの、追っかけ少女群の前で、なり始め
てしまったのですね。これが。

 51歳、妻と子供二人、犬一匹、家族に恵まれ、貧しくとも心豊
かに生きているオッサンも切れます。あ、この場合の切れるとは、
つまり極度の恥ずかしさのなかで、前後不覚・言語道断・魑魅魍魎
あーとにかくうまく表現できません。ま、つまり完全なオヤジバカ
になってしまいました。ぼくがかろうじて覚えているのは、もうす
こしで爆発しそうになっている真っ赤な顔面と、なんだかわけわか
らず四方八方のビルを指差して歩き出している自分です。

 薄れゆく意識のなかで、誰かがささやいています。マイシティだ
ぞ。マイシティだぞーーー・・・・ん?、そうかここはぼくのマイ
シティだったはずだ!気を強くもて!・・違うのです。違うのです
ね。これはじつはマイシティビルのことだったのです。とっくに切
れている携帯電話に向かって、さも話中のごとく、なにやらぶつぶ
ついいながらその場を脱出すべく歩みを進めていると・・・・・・

 ガーーーーン!ガーーーーン!第二の衝撃です。話中であるぼく
の携帯が・ガーーーーン!・・賢明な読者はもうオワカリデスネ。
はい。携帯の着メロが鳴り出したのです。話中の携帯が・・一瞬ぼ
くは何事がおきたのか正確に把握できず、しかし、すぐわかり、そ
して完全に意識を失いました。
                          続く


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                   新宿               8/24



 久しぶりに街へでました。・・・あ、しかしこんな書き方だと、
ぼくはまるで、自然がいっぱいの田園地帯に住まっているみたいで
すね。もっとも住まいのいまの環境が、けっこうな自然にめぐまれ
ていることは確かです。なにせ住まいのすぐ脇が雑木林、それもけ
っこうな広さの雑木林なんです。

 さて新宿へ出かけました。我が家を出るときに忘れてはいけない
とですよ、せっかく待ち合わせの場所をプリントアウトしたメモを
ですね、ちゃんと目に付くようにと靴箱の上に置いておいたのにも
かかわらず・・はいあっさりと忘れました。毎度のことですが、忘
れてはいけない!イケナイ!ダメダ!っとばかし、プレッシャーを
自分にかければかけるほど・・・・忘れます。

 でも、プレッシャーをかけなければ、それはそれで忘れるので、
どっちにしたって忘れヤス!はい。で、それでもってですね、やっ
ぱし危惧していたとおり、新宿の街は変わってました。なにを隠そ
う、あ、いえ別に隠さなくてもいいんですけどね。ぼくはその昔、
学校へ行くのに、この駅で総武線に乗り換え、信濃町まで通ってい
たのです。

 でもってかって知ったる駅とばかし・・・でもなんだなぁ、よく
よく考えれば30年も前の新宿駅を、かって知ったるなどと考える
ことじたい、オバカなのですけどね。とにかく駅に来ました。改札
口を出・・・デ・・で・・どこを出たらよいのだダ!、なんだコレ
ハ!まるっきりわかりません。駅のホーム中央に仁王立ち。東西南
北を見渡す。待ち合わせが、駅ビルの8階ということだけは覚えて
いるのです。しかしそこいらまわりは駅ビルだらけです。駅ビルは
その昔、ステーションビルといって、いっこだけだったのに・・・
でもって3階にはマイアミっていう喫茶店があったのに・・

 ボーーっとした顔で、アチコチ見回していると、駅の壁にルミネ
という字を発見。そうか!ルミネだ。たしかテレビで宣伝してた。
ぼくはルミネ方向に向かう。しかし、テレビでルミネっていってい
たのと、待ち合わせ場所がルミネと、いったいどうつながるのだ、
しかし、いろんなことがわけわからない状態になっているぼくは、
強引にその歩みを進める。しかし、ルミネ1階の案内板をみて、ガ
ーーーン。な、なんと、ルミネは7階までしかない。

 キ、キサマーーー、ルミネ。オイ、オマエ、いったい8階をどこ
へやったのだ。今すぐ戻せ。この場へもどせーーーー・・・・・・

 大声で叫ぶ私を、なにかのイベントがあるらしく、10代の少女
だらけのその場所のみんなが・・ミツメていました。
                            続く


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                                  8/17

                  夕涼み

 約1ヶ月マガジンを休んでしまいました。今年はなんだかだらし
がないですね。昨年はそれほど休むことなく続けることができたの
にと、ちょいとばかし反省しています。
 
 ここのとこ、午後の時間帯なると、やけに外が騒々しいのです。
逝く夏を惜しむように、蝉たちが大合唱。ついこのあいだですよね
、クリスマスだの正月だのと騒いでいたのは。えっ、誰もそんな風
には思わないって、そうかなぁ。ハハハ、でもね、あっという間に
8月なんかも終わりになりますよ。

 こころなしか夕刻の涼しさを感じます。でもこれはすこし早過ぎ
るかもしれないな。さてと今日は曇り空、思い立って早い時間にケ
ンタクンを連れ散歩に出ました。最近の読者はご存知ないかもしれ
ませんが、住まいから歩いて1分の雑木林は、まだ充分に武蔵野の
面影を残した里山なのです。中に入ると木々以外、人口の建造物は
一切視界から消えます。騒々しい蝉たちの合唱も気にならないので
す。なんだか不思議ですよね。

 歩きながら大きく手を上げ深呼吸を数回。ケンタクンがその様を
眺めて首を傾げます。ケンタクンは何か疑問なことに遭遇すると、
首を傾げ、おまけに眉間にしわをよせます。本当なのです。

 ぼくは、ケンタクン疑問に答えず、さらに数回深呼吸を数回・・
おっとっとっと、そのまま立ち木のてっぺんを見上げていたら、景
色がぐるぐる回りだし・・・めまいです。フラフラ、フラフラ、な
んともだらしないです。

 倒木に腰をかけ少しばかり休憩。首傾げ犬の背中をなでてやりま
した。何度も。唐突ですが、雑木林を吹き抜けていく風は生きてい
ます。そう感じます。


 例年にない暑さが続きます。皆様どうぞご自愛なさってください。



                       深津 勝
                     

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                                     7/10

            早朝

 湿気が多く、めったやたら寝苦しい日が続く今日この頃ですね。
それでも朝の早い時間は、いくぶん楽です。突然ですがここのとこ
ろ本屋に行っていません。というより本当のところはですね、本屋
に行くの控えているのです。ぼくにしてはめずらしく、一ヶ月以上
・・たぶん5週間ぐらい行っていません。

 理由は簡単です。それだけ本屋から離れていると、行けば読みた
くなる本が山とあるはずだからです。それに食欲・読書欲・怠け欲
・犬との散歩欲と、欲がつくものに対しては、意思が滅法弱いのが
ぼくの欠点です。であるからして、行けば両手で抱きかかえるほど
の本を買い込むに決まっているのです。

 正直なところ、いまのぼくには、楽しむ読書をする時間がありま
せん。仕事やその他の必要な書物をこなすのに精一杯。願うのは本
に対して食傷気味にならないようにと・・・つながりがあるとはい
えないないけれどね、以前、カレーライスを好きだからといって食
べ続け(朝昼番と)すっかりキライになったことがある。ようする
にバカなのですね。

 でもって、とにかく、つながりがあろうとなかろうと心配なので
す。それでね、話がとつぜん飼い犬のことになります。あの、えー
とですね。とつぜん話の中身が変わるのはぼくの場合まいどのこと
、したがって今日本日、はじめてこのマガジンを読まれた方、驚か
ず、慌てず、怒らず、今すぐ受話器を持ち上げて抗議の電話を・・
・んなことはありませんね。まぁ、いつもこんなかんじなので勘弁
願います。

 そう、その飼い犬ケンタクンとの散歩ですがね、ここんとこぼく
は冬の格好で毎日でかけています。だから少々うんざりなのです。
なぜかって、そう、暑いのです。もちろん冬の格好ですからあたり
まえですがね。単純なぼくは、実験というとちょっとオーバーです
が、つまり犬とおなじ気持ちになってみたかったのです。かれらは
一年中一張羅(いっちょうら)ですからね。

 でもってやはり暑いのです。ぼくの結論。やはり夏の時期の散歩
は、朝夕の陽が出る前、そして陽が落ちてから、そういう結論にな
りました。あたりまえなのですが、ちょっと楽しみながら経験をし
てみました。


                            

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                                  7/01

                  夜中

 たまにですが、夜中に3回も4回も目が醒めることがあります。ひ
どい夢でもみたのかというと・・これがそうでもない。いや、ひょ
っとして、じつのところはみているかもしれないんです。けど、と
どのつまり、なんだかよくわかんないのですね。なにせなーんにも
覚えてないんだから。まったく夢ってえものは、なんともしょうが
ないものであります。

 ボオーーッとした頭で便所に行き、ボーーッとした頭でまた布団
に這い上がる。それでもなんとなく「ナンデこんなに目が醒めるん
だかなぁ」と、そんくらいの頭は、ボーーッとしたなかでも働いて
いる。そうそう、それからね、ほんとにまれにだけど、夢の中身を
覚えていることもある。しかしそれはそれで問題があるのですね。

 なんだか話がつながらないけど・・(まぁ、いつものことなので
許してください)とにかくその夢なんですけどね、夜中に目が醒め
、ボーーッとしながらも、なんとなく、何の具合か夢の中身を覚え
ていることがあります。えらい金持ちになっているお話なんかだと
ね、やっぱし続きがみたくなりますよね。もうこのままズーーーッ
と夢のまんまでいたいボクちゃん・・・なんてなことにねそこはそ
れボーーッとしていても思っちゃいます。

 けれどね、しかし、そのつまり一度としてですよ、その夢の続き
ってぇやつをね、ぼくはみたことがないのです。どうやってもダメ。
もっともボーーッとした頭であれこれ考えているわけですから、続
きをみようみようと思いつつ、けど布団に這いあがった途端に忘れ
てしまった。なんてカンジかもしれませんね。

 けっきょく朝になって、すこしばかり寝不足で、それに加えて頭
のボーーッも少し残っている。というありさまになることがいつも
のこと。あーあとかいいながら、屋根裏三階の仕事部屋兼勉強部屋
兼オモチャ部屋へ這い上がる。ボーーッとしながらPCのスイッチを
入れ、夢のことを思う。じっと手を見る。

   

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                            6/24

                ヘリコプター

 バタバタバタバタと大きな音をたててヘリコプターが頭上を通り
過ぎていく。紅い印が見えるけど、それが日の丸かどうかまでは確
認できなかった。道路わきの畑では、トウモロコシの茎が整然と並
び、そして大きく伸び揃っている。

 我が家の近所にはまだ、けっこうな範囲で畑が点在している。ぼ
くはいつも思うのだけど、ここいらの畑で作業しているのはお年よ
りばかり、輝くような白い歯を見せて、額の汗を、腰の手拭いで拭
いている農村労働青年には一度もお目に掛かったことがない。

 やはり農業では、おもうような収入を得られないのだろうか、あ
るいはカッコ悪いからだろうか、でもほんとうのカッコよさはさ、
白い歯や、額の汗にあると、ぼくなんかは真剣にそう思うのですが
ね。

 突然ですがぼくは今年52歳、人生も半分を過ぎてしまいました。
そこでね、ちょっと昨日の休みに、ナンダカ大袈裟だけど、半生っ
てヤツをね、そいつを記憶を振り絞って振り返ってみたのです。

 10代はどうでもいいのです。20歳を過ぎて、一応社会人とな
って、そう、ぼくはそこいらへんでいったい何をしてきたのだろう
かと。いえね、半生の反省なんかじゃあないんですよ、いったいど
んなだったのかなぁと・・・考えてみました。

 それでね、いろいろなことがけっこうあったんだけど、とどのつ
まりたいしたことはなんにもない。じつにつまんないんですね。そ
こでぼくは決心しました。この先10年ごとに、キチンと振り返る
ことをね。10年ごとに振り返るんだからな、ということをプレッ
シャーにしてね。もちっと有意義な時間を持とうかと。

 そこでさ、ちょっと照れくさいけどね、カッコつけて言えば、6
0歳になったとき、そして振り返ったとき、その10年のあいだに
ぼくが何をしてきたのか、ではなくてね、「何のために生きてきた
のか」と自分に問うて、そしてそれにキチンと答えられるような生
き方をしようかなと・・・・・ウーーム、やはりちょいと照れくさ
いな。


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                               6/15

                 心の奥を

 いつも見透かされている気がする。何かって・・・・ちょっとま
てよ。うーーーむ、なんだな、このようなことを書くとですね、1
34万5千人の読者の中の87万3千7百50人ぐらいの人々が、
「えぇかげんなことゆーでないぞ」と、額に真中に怒りジワをよせ
て「ザケンナヨ!」とばかしに、旗やのぼりを掲げて、村や町を練
り歩く(んなことあるわけがない!)気もしますが、まぁそこんと
こはなんとか堪えてつかーさい。

 いえね、実を言うとぼくはケンタクンにですよ、なにからなにま
で心の中を、つまり考えていることのすべてを見透かされているよ
うな気がするのです。ほんとなのです。たぶん動物と一緒に人生を
楽しく、そして穏やかに仲良く過ごしている方の多くは、おなじ思
いをされたことがあるのではないでしょうか。

 過日のこと、ぼくはいつものごとく散歩をしていました。もちろ
んケンタクンと一緒です。すこしばかり寝不足で体調がおもうよう
でなく、その日の散歩は早く切り上げたいなと思っていたのです。
雑木林を通り抜け、いつものコースに向かう辻で、ケンタクンがチ
ラッと、そうチラッとぼくの様子を伺ったような気がしたのは、考
えすぎでしょうか。

 そこを曲がるですよ、いつもの半分の行程になることを彼(ケン
タクン)はわかっているはずです。何度かそのコースを選び、中途
から、つまり散歩の距離が短くなることを理解して舌打ち(舌打ち
のようなしぐさです)をしたのをぼくは目撃しているのです。

 そんなコースを自ら、そう、中途で舌打ちもせず、選んでくれた
のです。感動するではありませんか、ぼくは彼が3歳を過ぎる頃か
ら、その辺のことをなんとなく感じていました。いまぼくは、はっ
きり断言できるほどそれを感じています。ケンタクンはぼくの気持
ちを察してくれたのを。

 遠からずぼくたちは意思の疎通をはかることが可能になります。
それは言語を通してではなく意思の会話になるのですね。むふふふ
なんだか胸が高鳴ります。なにせ意思の疎通ですから。ぐふふふ。
 

 

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                                 6/09
                遠近画法

 学校からの帰り道、ケンタクンは少々バテぎみでした。そう、け
っきょくケンタクンとぼくは、甥っ子の運動会へ一緒に出かけたの
です。強い陽射しの中、いつもより多く歩いたせいかもしれません
ね。

 それからのことケンタクンは、日中の散歩をあまり喜ばなくなり
ました。もっとも、毎年暑くなりはじめの頃はいつもこんなんかな
ぁと・・・そうですね、やっぱり毛皮を着こんでいる犬族は暑さに
弱いのでしょう。

 昨日も、少し日が翳ってきたので、日中でしたが散歩に出かけま
した。雑木林の中は快適です。しばらくいつものコースをブラブラ
していたら突然雲が切れ、お日様がドウダとばかしギラギラとぼく
とケンタクンを照らし始めました。途端にケンタクンは歩みの速度
を落とし、終いには悲しい顔でぼくを見上げます。

 「あのねぇ、君は吸血鬼かい。ドラキュラじゃあないんだからね
、ちょっとばかしお日様に照らされたって悲しい顔してはいけませ
んね」と、ぼくはやさしく諭しました。

 しかしよくよくヤツの顔を見ると、ナンダカいつもより牙が飛び
出ている気がしないでもない。そういやぁこのあいだの夜中、黒マ
ントを着たルーマニア人と親しげに喋っていたけど・・(嘘です)

 さてさて今日はお休み日曜日。ぼくらは早朝散歩に出かけました。
お日様がでる前に、そうです涼しいうちにです。日曜日の早朝は散
歩人がたくさんでした。でもお年寄りがやはり多いかな。車がほと
んど通らない直線道路でケンタクント競争です。

 ぼくの負け、あたりまえですね。1キロ以上はあると思われる直
線道路の先を眺めると・・・フフフ先っちょの方は狭くなって見え
ますねぇ。しかしこれもあたりまえです。でもね、なんだかあたり
まえがわけもなく嬉しいときってあるんですよ。

 

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                                   6/02

            運動会

 今日は甥っ子の運動会。ぼくはこれから出かけようとしている。
今考えていることは、ケンタクンを連れて行くべきか、あるいはや
めほうがいいか、ってなことなのです。しかしそれは、驚くほど重
大な問題をその内に秘めているのですね。

 まず、学校の中へ犬は入れるのだろうかということです。これは
例えば小さな愛玩犬みたいに、簡単に胸に抱えられる犬ならさほど
問題にならないだろうけど・・いえね、確かにケンタクンだって胸
に抱えることはできやすよ。できるけど・・でも10歩以上は歩け
そうもない。

 2番目にケンタクンは大の犬嫌い(好きな何匹かは除く)したが
って、そこいらじゅうで唸りまくりの大騒ぎと発展する可能性があ
る。こういうときは必ず小さな愛玩犬の持ち主が、必要以上に非難
の目を、ただ大きいということだけで、けなげな、心優しいケンタ
クンに向かって注ぐのです。・・・?

 3番目は、最近、ケンタクンの筋肉と骨格が異常に発達しており
ぼくはそう簡単にケンタクンを制御できなくなっているという事実
です。一昨日もぼくは。坂だったからですけど、ケンタクンに地べ
たを数メートル引っ張られ、「待って、オネガイ!」などと情けな
い声を出してしまったほどなのです。周りに人がいなくてよかった
のです。

 うーむ、そろそろ行かないと甥っ子のかけっこが終わってしまう
かもしれない。そういえばお昼のご飯はぼくの分まであるのだろう
か。あ、いや、そんなことはどうでもいいのだな、とにかくケンタ
クンだ。ヤツはさっきから気配を察して、出かける準備をし始めて
いる。あーあ、どうすっかな。とにかく連れて行くか。

 進行中なので報告はまた。あ、そうだ、ケンタクンの水筒は持っ
ていかないとダメだな。

                       深津 勝

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                                           5/21

                  肉体改造

 またまた取り組んでいます。いえね、まぁ、はっきり言うと、毎
年のことですからね。読者の中には「ったくぅーまたかよー」と思
われている御仁が居られるということを・・充分に承知したうえで、
なお・・・・・・まぁ、うーーん、あの、それほど力むこともない
のですがね、とにかく毎年のことなので、ついつい力んでしまいま
したが。

 言い訳はいたしません。いたしませんとも。しかしですよ、この
ぼくの年でですよ、あぁたねぇ、偉いと思いませんか、ええぇーー
なんつったって肉体改造なんざんすから、ほんと、改造やんすから
ね、上半身なんか三角おむすびみたいになっちゃうんすから、はい。
あ、でも、あの、もちろん目標ですよ三角は・・・・・

 なんてなことで、毎年夏前になると、ぼくは突然目覚めるのです。
いつも計算では、このあたりから改造に取り組まないと、夏の盛り
には間に合わないと考えるのです。ということで、キチンと毎日努
力すればですよ、ぼくの上半身三角おむすびがですよ、夏の盛りに
は海辺で、そして都心のホテルのプールで、見られるのです。けけ。

 アーア、こんなことばかり考えているからなぁ、ぼくはいくつに
なっても大人への進化ができず、少年の透明で繊細な心を持ち続け
ちゃうんだなぁ。あーあ、早く大人になりたいなぁ、泥まみれにな
った力強い心臓と、毒々しい銀座のネオンのような色になった大人
の鈍感な心がもちたいなぁ・・・ん?

                    

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                                  5/15

              ヘミングウェイ

 文豪のお話ではありません。大恥をかいた話です。どのくらい前
だったかなぁ、ぼくは女性ピアニストのドキュケンタリー番組をテ
レビで見ました。たいへんな逆境をくぐりぬけたその半生を紹介し
ていたのです。

 最近なんだか妙に涙もろいぼくは、そんなに悲しいかなぁ、と皆
さんが思うような場面でも、目を赤くすることが多くなりました。
この番組を見ていたときも例外ではなく、いつものように、家人に
そんな姿を見られるのがいやで、途中から別室にて一人で見たほど
です。

 「人生の幸不幸の容量は決まっているんだ」と何かの本で読んだ
記憶があるな。この女性ピアニストの名前はフジコ・ヘミング、こ
のところ、よくテレビにもでている彼女は、その不幸の分量を、壮
絶なその半生で、きっと使い果たしたに違いないのです。

 ぼくは、彼女の淡々と語る口調に、その喜びをみます。これから
の半生、その半生をズーーーッと幸せに過ごしていただきたい。心
からそう願います。

 さて、彼女の幸せを願ったぼくは、早速彼女のCDを買わなけれ
ばなるまいと鼻をふくらませ、その機会をねらっていました。先日
、やっとこさ近所のイトーヨーカドー東久留米店3階の新星堂に、
同じ階でファックス用紙を買いに行ったついでに寄ることができた
のです。

 ぼくはカウンターにツカツカよ歩みより「えと、あの、フジコ・
ヘミングウェイのCDはどこにありますか」と、やはり鼻を膨らま
せて尋ねました。どこでどう、ぼくの脳神経中枢が、ヘミングをヘ
ミングウェイにしてしまったのかはさだかではないのですが・・・
ヘミングウェイになっちゃったのですね。

 賢明なる新星堂の売り場主任は(主任かどうかはわかりません)
ぼくをさげすむこともなく、あざ笑うこともなく、方頬で冷ややか
なひきつり笑いをすることもなく(たぶん)やさしくぼくを見つめ
、幼子に説明するように、その場所を教えてくれました。

 ぼくは鼻を膨らませ、ツカツカと教えてくれた場所に突き進み、
「オウオウ、なるほど、ヘミングウェイほどになると、CDもたく
さんでているのだなうぁ」と一つを取り上げ・・・・な、な、なに
ーーーーヘミング・・・・何度読んでもそれはヘミンウェイではな
くヘミングです。

 背中に、ひきつり笑いと、あざ笑いと、女主任と方頬と、さげす
みと、とにかくいろんなものが突き刺さっています。ぼくはそれら
を、その生来の感受性の強さが災いし、モロに受け止め、赤面し、
どのようにしてこの場から去ることができるか、などということな
どをキチンを考えることもできず、結局CDも買えないままただう
なだれて、「あ、イカン」とか、わけのわからないことを言いなが
ら去ったのです。フウ。

 ぼくはどうしてもフジコヘミングのピアノ演奏を聴きたいのです。

     

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                                    5/10
              
いやはや 

 いやはやなどと書くなんてオッサンもイイトコだよなぁ。でもオッ
サンには違いないし、しかもイイトコだし、ヤッパシいやはやなので
すね。じつは昨日、明日から軽井沢なんて書いたけど間違いで、ほん
とうは明日からなのです・・・なんだかわかりにくい表現だな。

 今日はね、じつは、けっこうな発見をしました。それはなんとケンタクン
のことなのです。あっ、でも、ソレハナントなんて書いたけど、ぼくが
書いていることは、ほとんでケンタクンがらみが多いので、これもやっ
ぱし、いやはやですね。

 でね、きょうは雨でしょ、前からね、なんとなく感じてはいたんだけど、
雨の日の散歩のときは、ケンタクンいつもより散歩コースが短くなるんです。
あの、ぼくはほとんどケンタクンまかせで動くのです。もちろんだいたいの
コースは決まっているんだけど、その大枠の中で彼の自由にしてもらって
るんです。

 それでね、雨の日のケンタクンは、なんとなくショートコースになるのです。
けっして、雨が嫌いだとか、毛皮が濡れるのがいやだとか、手足が汚れる
からいやだ、というわけではないようなのです。

 なんとなくぼくの顔を見上げながら、いつもより短いコースを選択します。
雨の日のぼくは・・・やはり憂鬱なのです。そんなぼくの気持ちを察してく
れているのだと思います。ほんとうです。じつに賢いのです。

                                   5/09

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               軽井沢

 明日から軽井沢へ行くんです。といっても日曜日の夕方には帰っ
てきますがね。遊びではありません。だけど仕事でもありません・
・・半分仕事になるのかなぁ、とにかくオイシイ空気が吸えるかな
と期待しています。

 問題はケンタクンの散歩です。カミさんと娘の二人で、なんとか
お願いをして行ってもらいましょう。軽井沢では2日間、研修セン
ターのようなところで館詰め。部屋に閉じこもっていなければなり
ません。けれども普段と違う環境での会合も、また楽しいものであ
ります。

 ずいぶんと前に報告したような気がするけど、近所の公園が未だ
に整備されません。そこが原っぱであった当時は、毎日ケンタクン
の散歩コースでした。その原っぱが市の持ち物になり、そして公園
に整備されると決まり、そして始まったのが今年の始め。九分どお
り出来上がっているみたいなんだけどなぁ、でもまだ柵がしてあ
って入れないのです。

 工事はストップしたまま。看板ぐらい出して、いついつまでには
完成しますよと書いたって、バチはあたらないとおもうけどな。で
もどうでもいいや。ぼくとケンタクンはね、柵を乗り越えて毎日入
り込み、思う存分駆け回っているんでね。へへ。
 

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                                           5/06

                 菖蒲湯

 皆さんは菖蒲湯なんてはいらないのかなぁ。ぼくは昨日はいりま
したよ、カミさんが毎年用意してくれるんです。小さいころはお風
呂屋さんで、友達といっしょにワイワイ騒ぎながらはいったもんで
す。

 我が家の菖蒲湯はかわいいもんです。菖蒲の茎が3束ほど湯船に
浮いているだけ、それでも嬉しいですね。昔は、昔と言っても中学
生時代までかな、ぼくは菖蒲の葉の草笛で、きれいな音がだせたの
ですよ。でもここ最近は、何度トライしても音さえでません。どこ
が違っているのか音さえでないのです。クヤシイな。

 それでも葉っぱをちぎると、かすかに菖蒲の葉のニオイがします。
そのニオイは、脳味噌の奥のほうに映像を映し出します。風呂屋の
光景が、素っ裸で友達と遊んでいるぼくが、そこにいます。じつに
楽しそうですね。

 そんな光景を感じる一瞬、ぼくは我が家の湯船でニヤッと笑いま
す。そうそう、秋には柚子湯にはいりますね。けれども風呂屋さん
の柚子湯は、袋に入った柚子が隅っこに吊るしてあるだけで、それ
ほど楽しく遊べなかったような・・うん、そんな気がするなぁ。そ
れでもニオイは柚子湯のほうがぜんぜんよかった。

 秋の柚子湯も楽しいけど、五月の菖蒲湯は、来る夏の期待が、や
はり楽しさ倍増させるのでしょう。ぼくは好きでした。

 

 
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                                   5/03

      
          そこには季節が
 
 先日茨城に仕事で出かけた。鹿島スタジアムの近くだった。成田
を過ぎ、東関東自動車道の終点潮来インターを降りても、目的の鹿
島スタジアムの近くまではバイパスが完成しており、サッカーの客
でごった返すであろう景色を想像しながらも、ぼくは悠々到着。

 目的地は、鹿島灘を近くにセカンドハウスが並ぶ別荘地。けれど
も360度見わたすかぎりの平坦地。何度首をまわしても平坦地な
のです。いっさい起伏がない。なんとなく寂しい思いがしました。
スタジアムの近隣はのっぺらとした空き地がいっぱい。すべてに駐
車場の看板がかかっていた。競馬場の近くといっしょだな。

 突然だけどぼくは里山が好きです。理想は小川が流れていて、遠
くにはそびえ立つ山々見える、そんな里山です。あんまり平坦な土
地はかえって息が詰まるな。
 
 雑木林は今が一番きれいかも知れません。きれいという表現はお
かしいかな。美しいといえばいいのだろうか。とにかく青葉がとっ
ても気持ちいい。

 小さな草から大きな潅木までみんな、精一杯主張している。春だ
、いや夏だ、いやいや初夏だ、それぞれが手を伸ばし足を張り出し
、覆い被さるように主張をする。

 木々の間から覗く、そう、射しこんでくる太陽の光線が、緑の林
を縦縞模様にしている。見上げていたら、なんだか頭がクラクラし
てきた。このまま倒れこんでも痛くないだろうなと思った。なぜな
ら下には、落ち葉がまだまだいっぱい。サクサクしている。

 倒木をイスに、すこしの間目をつぶった。ここでは、まったくも
ってぜいたくな時間がながれている。こんなに贅沢をしているとバ
チがあたるかなと思うほどです。どうしたのとばかりぼくを見つめ
る飼い犬のケンタクンの目にも、優しさが輝いている。

 緑の季節は、犬にも人間にも優しい心を、そして余裕を、ほんの
少し与えてくれるようだ。
 



               

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                                          5/01
                 ヤラレタ!
      

 雑木林は今が一番きれいかも知れない。きれいという表現はおか
しいかなぁ。とりあえず美しいといえばいいのだろうか。とにかく
青葉が気持ちいい。小さな草から大きな潅木まで輝いている。

 雑木林のニオイもやはり・・そうかぁ、ニオイの場合はなんて言
ったらいいんかなぁ・・ええいめんどくさい、輝いているにしてし
まえ。だからニオイも輝いているのです。雑木林の真中にいると、
何回でも深呼吸したくなります。

 きょうは秋葉原まで出かけた。といっても仕事です。いつもと違
い電車での移動、ラッシュの時間を避けて朝の8時過ぎに家を出ま
した。各駅停車の池袋行き、座れたのでホットしていると、隣の青
年が急に立ち上がるのです。ウムム、なんだなんだと彼の視線の先
を見ると、おばあさんが嬉しそうにおじぎをしてこちらにやってき
ます。

 やられましたね。完璧に。くやしいです。ぼくは、それでなくて
も普段の生活の罪滅ぼしに(といっても法を犯す悪さをしているわ
けではありません)近くに困った人がいれば率先して手を差し伸べ
ることに喜びを感じるという、少し偏った、少し自分勝手な、少し
自虐的な・・・こりゃちょっと違うかな・・とにかくそんな傾向が
最近とみにみられるのです。

 だから異常にくやしかったのです。しかし、そのおばあさんは、
腰掛けてすぐに、完璧にぼくを壁代わりにして、見事にぼくによっ
かかったまま終点まで寝ていました。壁になったぼくは、だいぶ満
足して、終点の池袋近くで声を掛けました。「シュウテンデスヨ」

 おばあさんは、キョトンと前方をみて、手提げを胸元に引き寄せ
、なんだかぼーーとした顔で前を見ています。最後まで壁になって
いたぼくを無視し、やはりキョトンとした顔で立ち上がり、先に降
りていきました。

 ぼくはそのおばあさんの後を追いかけるように、やはりキョトン
とした顔で電車を降りたのです。